ご紹介の前置きとして
わんこうぼうのお仕事の進め方には、興味深いものがあります。ゆるり散歩堂との窓口は長男のtaiseiさんで、お父様とお母様との3人のチームワークが、いいバランスで作品に反映されているようです。少し前置きが長くなるかもしれませんが、わんこうぼうの事業スタートの頃からご説明させてください。
taiseiさんは、福岡で医療系学術イベントに関わるお仕事に従事していましたが、6年ほど前に、実家の波佐見に帰ってきました。そしてお父様とお母様が営む現在の事業に加わったのでした。
わんこうぼう…ふたつの事業を行っています
波佐見の実家の事業は、もともと陶磁器の出発点である石膏型作りをする会社「山口石膏製型」と、波佐見焼の完成品を制作・販売する「わんこうぼう」とで成り立っています。わんこうぼうは、10年ほど前から開始しています。
きっかけはお母様が、自宅利用の食器の制作をお父様に依頼したことからでした。当時、実家でともに暮らしていたお姉様が、それらをプロモートしたようです。お知り合いの店舗での展示や、地域での展示会を通じて、作品を見せる場をつくり、それらが受賞したり販売が決まったりと、着実に結果を積み上げていくことになりました。
その後、地域活性化のためのイベントで、現在の「峠の里祭り」への参加を契機に、徐々に作品点数を増やしつつ、本格的な商品開発の地盤を作ってきました。
商品企画は三人のチームワークで
さて冒頭、わんこうぼうのお仕事の進め方が面白い、と言いましたが、こんな感じなのです。お父様は石膏型業として、従来、有田の割烹食器の型づくりを行うことが多く、どうしても、企画が業販向きということになります。お母様は、実際、主婦として食器を利用する立場から、日用食器の視点とともに企画に向かいます。一方taiseiさんは、食器以外の小物関係の視点から企画に取り組みます。
そこでつい成り行き上、食い違いや意見の衝突になりますが、そこは仲の良い家族であるだけに、互いの良い点を評価しつつ、結局はいい落としどころで落ち着くそうです。そんな背景とともに、わんこうぼうの作品を眺めてみると、思わず微笑みたくなるものも発見できます。
山口石膏製型として
ところでベースとなる石膏型の事業は、わんこうぼうのものづくりにとって、大きな強みにもなっています。多くの生地屋さん、窯元さん、それに商社さんとのつながりを経て、陶磁器成形の様々なパターンが、自分たちの中に蓄積されているからです。そこからオリジナルなデザイン開発が生まれます。時に類似商品となりそうな場合には、それらを厳格に排除することもできます。またそうすることが、型屋としての信頼性にもつながるわけです。
しかし、石膏型業としては、割烹食器の売上減少とともに、同業の撤退などにより、需要も供給も縮小気味となっています。やれる人が少なくなってきた、ということは当てにされる機会も増える、ということでもあり、従来の取引先のことを考慮するなど、taiseiさんご家族の思案の対象ということになります。
わんこうぼう、今後の方向性
ベースとしての型業と、完成品制作・販売の「わんこうぼう」、バランスをとりながら、最適な方法を模索中のtaiseiさん、そしてご家族です。わんこうぼうのロゴもなかなか味わい深いものがあります。わんこうぼうサイトから引用します。真ん中の形は、WANKOUBOUの「W」と、山口石膏製型の「山」、白を表すWHITEの「W」の三つの意味を表しています。そして石膏型ケースの形をモチーフにした形を外側に配置しています。そうすると、わんこうぼうのモットーでもある食卓に笑顔を添え、どこか笑った顔に見えるように組み合わせたシンボルマークとなります。